日本語版   中国語版       2003811日 1400
 

 ここのところ、人民元切り上げの是非をめぐる議論が国際的に活発に行われている。日本の塩川正十郎財務大臣が先進7カ国財務大臣・中央銀行総裁会議で提起したことで口火を切り、その後、米国のスノー財務長官もインドネシアで行われたアジア欧州会議(ASEM)で人民元切り上げを呼びかけた。米国の61業界の企業の集まりであるコーリション・フォー・ア・サウンド・ダラー(Coalition for a Sound Dollar)も通商法301条を適用し人民元を切り上げるよう求めた。さらには、7月16日の米連邦準備制度理事会(FRB)のグリーンスパン議長の議会証言で、世界経済のデフレ化が進む中、人民元は一層の注目を浴びることとなった。各国が官民一体となって人民元切り上げを迫る様相を呈しているわけだ。日本が扇動し米国が主導する形で人民元の為替問題が再び世界の焦点となっているが、果たして、人民元切り上げは実施すべきなのだろうか?

 

 各国が人民元切り上げを迫る理由は、以下のようなものである。

 第1に、現在の人民元の為替レートが低すぎると見られていることが挙げられる。人民元の為替レートは、現在の1ドル=8.3元の水準から、1ドル=4.2元程度に切り上げるべきだとの声もある。

 第2に、中国の外貨準備高が過剰だとの見方。中国のWTO加盟から1年余り経過したが、中国の輸入高が大きく拡大した様子はなく、貿易黒字ばかりが急成長し、外貨準備高は3400億米ドルに達した。

 第3の理由は、廉価な中国製品の大量輸出による、世界経済のデフレ化である。安価な中国製品の大量輸出で日本や欧州ではデフレが進行している。そのため、世界経済における相応の責任だとして人民元切り上げを迫るのだ...


 人民元切り上げが中国経済にもたらす危険性を6つ挙げてみよう。

 第1に、人民元の資本項目の自由兌換は開放されていない。つまり、市場にレート決定メカニズムがない以上、変動性への移行は意義を持たないのだ。

 第2に、中国でデフレが進行する可能性がある。

 第3に、外資導入の勢いが弱まり、対中直接投資が減少する。

 第4に、輸出の大きな障害となる。

 第5に、中国企業の利潤率を下げ、失業問題が深刻化する。

 第6に、財政赤字が増加し、貨幣政策の安定に影響する...


 塩川財務大臣の提案は政治的な作戦である。100元札を手にした子供が「これいくら?」と問いかけたとしても、それはその子がまだお金を使ったことがないというだけである。だが、塩川財務大臣が同様の問いを投げかけたら、ちょっとした騒ぎになるはずだ。この騒ぎとはすなわち、塩川財務大臣がG7財務大臣会議で提起した人民元切り上げのことである。日本人の立場に立てば、塩川財務大臣の発言もうなずけないではない。日本経済が長く低迷している中、中国だけが一人勝ちしているが、中国経済の活況には日本も貢献している。日本は中国から実に多くの商品を輸入しているのだ。人民元切り上げを実施すれば、円安効果で日本の輸出産業にも競争力が増すはずだ...


 人民元切り上げに否定的な経済学者らの見解をいくつか紹介しよう。

 ステファン・ローチ氏(モルガン・スタンレー チーフ・エコノミスト)

 中国は混乱する世界のスケープゴートとなっている。現在、中国に再度人民元為替政策の見直しを迫る声が世界的な風潮となっているが、これは大きな誤りである。各国の中国理解は全くお粗末だと言わざるをえない。私は人民元切り上げを迫る背景が気がかりである。自身の責任を果たそうとしない国家も中にはあるということだ。よくあることだが、日本を含め、弱体化している国はその原因を自らに求めず、他国になすりつけようとする。現在、中国は混乱する世界のスケープゴートに仕立てられているが、世界経済の不況と人民元の為替レートはあまり関係ない。多くの人が中国の競争力が安価な労働力、技術力、インフラ、人材、そして改革への情熱等であることを見落としているためである。中国が如何に世界と共存するかを学んでいるように、世界も中国との共存を模索すべきだろう。欧州や日本はスケープゴートである中国をしばしば名指しで非難するが、これは、こうした国々の経済がいかに衰退しているかを反映していると言えよう。

「ユーロの父」マンデル教授
 人民元切り上げはまだ適当な時期ではない。その根拠を8つ挙げてみる。第1に、人民元は自由兌換通貨ではないことが挙げられる。人民元の自由兌換化は中国経済の長期的目標であるが、人民元切り上げを実施すれば人民元の自由兌換化はしばらく棚上げされることになる。私は、人民元の兌換範囲を徐々に拡大し、レートの安定を保つというやり方が望ましいと考えている。第2に、仮に人民元を切り上げれば、デフレが加速する。なぜなら、人民元を切り上げれば輸入品の価格が下がり物価が下落するからだ。第3に、外資の対中直接投資が減少する。投資家が人民元切り上げの実施を知っていれば、当面は投資を控え、切り上げを待って参入するはずだ。また、外国投資家への利益は減少し利益率も下落するため投資は減速するだろう。人民元切り上げは外資の直接投資を縮小するのである。第4に、利益率が下がる。第5に、経済成長が減速する。第6に、失業問題が拡大する。第7に、財政赤字が拡大する。第8に、人民元政策を不安定にする。従って、現在切り上げを実施するのは適当でないと言える
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