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〜中国国際貿易学会常務理事 周世倹〜
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●現時点における人民元切り上げは、低廉な労働力という優位性を損ねる恐れがあるうえ、中国の輸出拡大と外資誘致、さらには国内における就業機会拡大にも影響を及ぼす。
●ある国の通貨と外貨との交換レートは、当該国の経済の実際的状況に基づき決定しないと、国民の生活に影響を与えることになる。
●人民元と米ドルという単一の為替レート連動体系を、米ドル、ユーロ、日本円を加えた通貨バスケットによる連動体系に徐々に改め、人民元の安定を図るべきだ。 | |
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人民元の切り上げ問題は、日本政府が昨年暮れに正式に提起した。2002年12月4日、日本の黒田東彦前財務官が英紙「フィナンシャル・タイムズ」に寄稿した文章の中で、中国のデフレが輸出を介してアジアと全世界に拡散しており、中国は人民元の切り上げに対する責任を負うべきだと指摘した。2日後、日本の塩川正十郎財務相も「日本のデフレは中国から安価な商品があまりに多く流入しているためで、世界的な不景気もこれと関係がある」と発言。塩川財務相は今年2月の先進7カ国財務相会議でも1985年に日本円切り上げを迫った「プラザ合意」のような文書を採択し、人民元の切り上げを迫るべきだと主張した。また、7月6日に閉幕したアジア欧州財務相会議においても、日本は同様の主張を繰り返し、欧州各国も一定の支持を表明した。これに先立ち、スノー米財務長官も「中国政府は市場主導型の為替制度に向かうべきであり、中国が柔軟性を持った為替政策を取るよう希望する」と述べた。これは米国も人民元切り上げ支持に回ったことを示している。
国際的に人民元切り上げ論は、中国経済が過去10年来、急速な発展を成し遂げたことを基礎に語られている。1994年以来、中国は米ドルと連動する管理変動為替レートを採用してきた。過去10年間、人民元は常に1ドル=8.70〜8.27元の狭い範囲内で推移した。この間に中国の国内総生産(GDP)は4兆元から10兆元へと拡大し、輸出入総額も2366億ドルから昨年の6208億ドルまで膨らんだほか、外貨準備高も212億ドルから今年6月末時点の3465億ドルまで増加し、日本に次いで世界2位に浮上した。このほか、累積貿易黒字も2289億ドル(1997年から2002年までの6年間における平均貿易黒字は316億ドル)に達している。外国の世論は中国の貿易黒字が政府による人民元為替レートの低め抑制という不公平な手段で稼ぎ出されたものだと認識している。7月21日発売の米誌「ビジネスウィーク」に掲載されたジェフリー・ガーテン前米商務次官(現エール大学経営学部長)の論文は、「中国の問題はさらに大きい。巨額の貿易黒字と日々増大する通貨準備は中国に対し人民元の再評価を迫ることになろう」と指摘した。
巨額の外貨準備や貿易黒字もマクロ経済の安定や経済成長にはマイナス影響を及ぼすこともある。ある国の貿易収支は輸入商品の構成がカギとなる。もし、大量の日用消費物資、香水、口紅などの化粧品を輸入しているのなら、好ましい貿易黒字とは言えない。もし、輸出品目が先進技術設備や必要な生産資材であれば、祖国の現代化に貢献し、総合的な国力増強に有利に働き、産業構造の高度化に利する。これにより、輸出商品のレベルが向上し、輸出競争力が強まる。これは開発途上国の「後発効果」に属するものだ。ここから生じる貿易赤字は合理的なものと言える。現在多くの大中型国有企業が技術革新を進めている。国家が十分な外貨準備を有していればこそ、それを現代化事業に投じることができる。世界的に適正な外貨準備高は輸入額の3ヵ月分と言われる。中国における昨年の輸入総額は2952億ドルで、3カ月分は738億ドルとなる。しかし、国家が外債の元利償還に毎年200〜300億ドルを充て、これに金融危機に備えるための500億ドルを加えると、必要な外貨準備高は1600億ドルで、全体で2000億ドルあれば十分だ。実際に1997年のアジア金融危機では中国は幸い難を免れた。カギは人民元が自由交換できないという「ファイアウォール」だった。外貨準備は多ければ多いほどよいというものではない。手中にある外貨に最大の効果を発揮させてこそ、意義がある。過度の外貨準備や貿易黒字は不必要な貿易摩擦を生み、批判にさらされやすくなる。
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通貨切り上げについては、日本円のケースを参考することができるだろう。戦後20年間、米ドルと日本円の為替レートは1ドル=360円に固定されてきた。これが1985年2月26日に1ドル=263円に改められ、1985年9月には米国の貿易赤字解消を目的として、先進5カ国の財務相がニューヨークのプラザホテルで緊急会合を持ち、共同で為替介入を行うことで、日本円とドイツマルクの切り上げを迫った。1988年2月5日に1ドル=128円をつけるまで、日本円は50%も値上がりした。さらに、1995年3月9日には1ドル=87〜88円にまで下落した。1985年から1995年までの間に日本円は年平均5.2%値上がりしたことになる。これに低金利の金融緩和政策が加わり、日本の不動産市場や株式市場が大幅に値上がりし、バブル経済が形成された。これはその後日本経済衰退の重大要因の1つとされた。米国のノーベル経済学賞受賞者で、ユーロ理論の提唱者でもあるロバート・マンデル氏は先ごろ単刀直入に「もし北京が人民元の自由変動を許せば、日本円と同様の結果を招く」と警告した。米モルガン・スタンレーの主席エコノミスト、ステファン・ローチ氏も7月18日付香港紙「サウスチャイナモーニングポスト」の中で、中国が人民元の為替レート調整を行うのは明らかな誤りだと明言した。このほか、「ミスター円」のニックネームを持つ慶応大学の榊原英資氏は8月4日、「中国に人民元の切り上げを迫るべきではない。切り上げは中国経済の混乱や地域の経済発展に脅威となる」と分析した。総合すると、人民元切り上げは中国人民にとって、糖衣に包まれた慢性的な毒薬だと言える。
現在、中国は依然として開発途上国だ。消費、投資、貿易拡大は中国の国民経済を急速かつ健全に成長させるための三大要素だ。しかし、人民元切り上げは外資導入と輸出拡大に明らかに不利で、国内の就業にも影響しうる。現在、中国沿海部の外資系企業における労働者1人当たりの給与は1000元前後だ。現在の1ドル=8元で計算すれば、外資系企業は労働者に毎月125ドルを支給することになる。これがもし、1ドル=4元になれば、外資系企業は毎月250ドルを支払わなければならない。これは外資系企業にとって、中国における労働コストが2倍に跳ね上がることを意味する。しかし、国内で消費生活を送る労働者が稼ぐのは同じ1000元だ。台湾紙「自由時報」は最近、「人民元が切り上げられれば台湾企業が回流する」と題した記事を掲載。同記事は「人民元が切り上げられれば、中国大陸の輸出コストが高まり、台湾企業は生産ラインを台湾に移すことになり、台湾の中国に対する過度の貿易依存を緩和することができる」と指摘した。このように、人民元切り上げは、低廉な労働力という優位性を徐々に損ね、中国の輸出拡大と外資誘致、そして国内の就業拡大に影響を与えかねないと言える。
ある国の通貨と外貨との交換レートは、当該国の経済の実際的状況に基づき決められないと、その国の経済発展に影響を与えるばかりでなく、人民生活にも衝撃を与える。ソ連崩壊前夜、銀行における店頭為替レートは1ドル=0.67ルーブルだったが、自由市場では1ドル=13ルーブルで取引されていた。ソ連解体後、ロシアは500日に及ぶショック療法を採用。ルーブルは急落し、経済崩壊につながった。ルーブルの為替レートは1ドル=5000〜6000ルーブルにまで下落。アジア金融危機もロシアの金融混乱に拍車をかけた。1998年初めにロシアは通貨改革を断行し、旧1000ルーブルを1新ルーブルとする新通貨を発行した。当時、銀行の店頭為替レートは1ドル=1新ルーブルとされたが、やがて同34ルーブルまで急落。今年8月初めにやっと同30ルーブルまで回復した。これは3万旧ルーブルで初めて1ドルと交換できることを意味する。80年代のソ連経済は中国より強いとされた。為替政策を誤っただけでこうなるのだから、ここから学び取ることができる教訓は大きい。民衆は人民元切り上げが自身に有利と考えるかもしれない。誰もがたった1元で1ドルを手に入れたいと考えるだろう。しかし、問題はそのような為替レートが中国の経済発展にどのような結果をもたらすかだ。中国のGDPは昨年時点で1兆2200億ドルで、米国の9分の1にすぎない。両国の経済力にこれだけ差がある中で、人民元の大幅な切り上げは幻の繁栄しか生まない。
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1.国際金融領域で為替政策の協調を強化し、対話により、米国や欧州連合(EU)および周辺国に中国が為替レートの安定を守ることが中国のみならず、アジアと世界に有利である点を説明し理解を求める。
2.中国企業の海外進出を奨励し、特に中国で不足している石油、鉄鉱石、銅などの資源を持つ国で資源開発を行う。
3.中国が世界貿易機関(WTO)に加盟後、関税引き下げ、輸入許可証などの規制緩和などに取り組み、貿易黒字が大幅に減少していることを積極的に説明する。このほか、中国における今年上半期の輸入総額は1858億ドルで、前年同期に比べ44.5%も増えたが、昨年通年で303億ドルに上った貿易黒字は上半期に45億ドルにとどまり、通年でも100億ドル前後まで減少するとみられること。今年の輸入総額が3700億ドル前後となり、米国の70年代後半の水準を達成。中国が世界の工場のみならず、世界の重要市場となりつつあることを理解してもらう。
4.人民元と米ドルの為替レート管理を適切な範囲で緩和し、狭い幅での変動を許容する。たとえば上下3%、最大で5%といった変動制限が考えられる。
5.人民元と米ドルという単一の為替レート連動体系を、米ドル、ユーロ、日本円を加えた通貨バスケットによる連動体系に徐々に改め、人民元の安定を図る。また、外貨準備の大半が米ドルである状況も改め、通貨建てを多様化する。
6.適切な規模の外貨準備を保有すると同時に、石油や鉄鉱石、銅など戦略物資の現物備蓄を強化する。これにより、備蓄がないために相場が高値推移しているときに大量の資源調達をしなければならない状況を打破する。石油を例に取ると、今年第1四半期はイラク戦争の影響で、中国の原油輸入量と輸入額はそれぞれ52.4%、138.4%の大幅増となった。精製油も輸入量と輸入額がそれぞれ76.7%、147.9%増加した。これにより国家が余計に支出した外貨は37億ドルに達する。もし十分な石油備蓄があったならば、このような状況は生じなかった。
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