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【第14回】
05年に反日デモがありましたよね。あの時は、日本のいろんなメディアがデモのことを報道しました。あれだけ見ると、中国の人が朝から晩まで暴動を起こしているような印象を持ってしまう。それで日本からも心配のメールや電話をいただいたんですが、実際、私の周りでは何も変わらず、親切な中国人はやはり親切だった。その時、「報道されていることは事実だろうけれど、『そうじゃない人もいる』ということを誰かが言っていかなければアンバランスだ」と思ったんです。
だから06年から始めたブログも、一般市民の視点を伝えることがテーマの一つなんです。いろんな報道があっていいわけだけれど、受ける側にも取捨選択の余地がなくてはいけない。一方の報道だけが目立つ時には、もう一方の立場を伝える人がいなければいけない。中国はとても大きくてさまざまな側面がある。ブログという個人メディアでは影響力は限られるかもしれないけれど、選択肢の一つを発信できればと思って取り組んでいます。
北京での暮らしの様子を描いたエッセイ集です。取り上げたものはほとんどが身の回りの出来事なんです。一介の日本人が触れた中国の一部を書き記したものにすぎないんですけど、中国や日本のことに関心を寄せてもらうきっかけになったらと思っています。日本でも、東方書店などの中国図書を取り扱う書店に置いていただいています。反中などの過激な本もある中で、普通の中国に目を向けてもらうきっかけになったら嬉しいですね。
「物語北京」 |
最初に出版社にお話をいただいてから出版が決まるまで、一年近くブランクがあったんですよ。出版社と契約してからは順調だったんですが、何があるかわからないので、「これは夢かもしれない」と最後まで言い聞かせていました(笑)。できあがった本をわたされた時は、やっぱり嬉しかったですね。日中英の三カ国語で出版されたので、中国の方にも読んでいただける。これまでお世話になった中国への恩返しといえるかどうかわかりませんが、中国の友人たちにも面白かったという言葉をいただいて、「本を出してよかった」と実感しています。
以前より、春節の廟会(旧正月の縁日)で見た中国の伝統芸能「快板」(クァイバン)に憧れを募らせていたのですが、そんな折に、自宅近くに愛好者のサロンを見つけて、足繁く通うようになりました。両手に持った竹版をカスタネットのように打ち鳴らしながら、おもしろおかしい早口言葉などを語る民間芸能です。相声(中国漫才)の寄席では、イロモノ的に登場し、場内をにぎわせています。そのラップのように軽快なリズムや美しい竹版の音、流れるような言葉にすっかりハマったのですが、やはり私には中国人的なリズム感がないようで…。後から入った小学生たちがどんどん上手くなるのを横目に、いまだに初心者グループで頑張っています(苦笑)。本書では、そんな私の日常や、オリンピック前夜におけるダイナミックな北京の変貌を見つめています。
「快板」のリズムは難しい… |
中国の人たちは人とのつながりを大切にしますね。日本人は割とあっさりしていますけど、中国人は「この人が友だちだ」と思ったらとことんまでつきあい、助けるようになる。義侠心みたいなものがとても大切で、信頼関係がすごく重んじられているんです。向こうが信頼しているとなると、こちらもそれに応えようとする。そうやって友情を育んでいくことができるのはありがたいし、嬉しいですね。
それにこちらでは、友だちのつながりで発展していくことも多いんです。ある人と知り合ったらそれをいかそうとする。「利用しあっている」というと語弊がありますが、信頼関係から発展するウィンウィンの関係というのがあるんですね。「多一個朋友、多一条路(友だちが多いほど選べる道も多い)」という言葉が中国にはあると教えられたんですが、本当にそうだと思います。「郷に入ったら郷に従え」で、私もウィンウィンでやっていこうと(笑)。